医院名:マロニエ矯正歯科クリニック 
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矯正コラム

2022.04.05

インビザライン矯正中について

質問

上の歯4番を2本抜歯しました。
下の歯左側4番が膿が溜まって神経を抜き、抗菌性根充法により治療しました。

最近になり、その治療した歯で噛んだ時に違和感があります。膿がまた溜まったのではないかと思っています。
そこで相談なのですが、その歯を抜歯して親知らずを活かし、奥歯を前に出して矯正することは可能なのでしょうか。
6番や7番を抜歯して親知らずを活かすという矯正は見かけますが、この様なケースはあるのでしょうか。

回答

根充したのはインビザラインを始める前でしょうか。
根充した歯はいつか必ず根尖性歯周炎が再発します。
歯の根の周囲に膿がたまり、周囲の骨の神経が圧迫されて痛みが出始めます。
再度根管治療を行えば、膿を取り去ることが可能になります。

何回も根管治療を繰り返していると、歯自体がもろくなり、抜歯せざるを得なくなります。
ゆえに、神経を抜いてしまった歯は一般的に寿命が短いとされています。
上の歯を抜歯してスペースを閉じているように、矯正治療でダメな歯を処分しようとお考えということですね。

可能不可能でいえば可能ですが、「マウスピース矯正で」「親知らずを使用する」というのは非現実的です。
矯正治療において、下の奥歯を前方移動するというのはかなり難しい動きとなります。
時間もかかるし、奥歯の前方移動させる反作用で前歯が後方移動してしまい、
咬み合わせがめちゃくちゃになる可能性があります。
さらには、マウスピース矯正は下の奥歯の前方移動を苦手としています。

ワイヤー矯正に切り替えたとしても、奥歯の前方移動にはアンカースクリューが必須となります。
4番を抜歯した後、5番を前方移動し、6番を前方移動し、7番を前方移動し、8番を前方移動します。
おそらく4年以上はかかると思いますし、不可能かもしれません。
6番や7番抜歯であれば、動かす歯が少ないですが、4番抜歯では多すぎます。
おそらく、担当する矯正歯科医師に提案しても断られると思います。

では、どうするか。
上の歯2本抜歯ということは、Ⅱ級仕上げに持っていく予定ということです。
Ⅱ級仕上げについては過去の質問で詳しく説明しているのでご覧いただきたいと思います。
Ⅱ級仕上げは、下6よりも上6が前に来ている状態です。
下の歯も抜歯するとなると、上6よりも下6を前に持ってくるⅠ級にする必要があります。

インビザラインを始めてある程度経過しているなら、おそらく上6は下6よりもかなり前に来ているかもしれません。
上下抜歯の形に持っていくのなら、直ちに治療計画の練り直しが必要になります。
せっかく前に移動させた上の奥歯を全部後方移動する必要があります。
治療期間もかなり延長されますし、今の治療が進んでいれば進んでいるほど長くなります。
現在の治療方針と真逆の歯の動かし方なので、下4を抜きたいのであれば、
すぐにマウスピースの交換を停止した方が良いでしょう。

左下だけ4番を抜歯すると、上下の歯の正中が左にずれてしまいます。
正中をずらしたくないのであれば、右下も抜歯し、右上の後方移動もしなくてはなりません。
そもそもの治療プランで上だけ抜歯になっているので、
下を抜歯すると上下の歯が後退しすぎてしまい、口元が引っ込みすぎるかもしれません。
治療プランが一から変わってしまうので、担当歯科医師とよく相談しましょう。

神経が無く、寿命も短い歯をせっかくなら処分してしまいたいというお気持ちはよくわかります。
抜けるのであれば、矯正歯科医師も積極的に無髄歯を抜歯するプランを立てます。
質問者様の状況ですと、下の歯を追加抜歯することは治療期間がかなり伸びてしまい、
難易度もかなり高くなることが予想されます。仕上がりも悪いかもしれません。
少々現実的では無いと思われますが、担当歯科医師に相談してみても良いと思います。

再質問

根充したのはインビザラインを始める前です。
現在矯正を初めて1年半程経っています。
先生のおっしゃる通り、上6番が下6番より前に来ています。
ちなみに、左側は1級仕上げ、右側は2級仕上げにする、という例はあるのでしょうか。

再回答

すでにⅡ級気味になっているとしたら、そこからⅠ級仕上げにするのは困難です。
ワイヤー矯正に切り替えたとしても、時間もかかるし難しいのではないでしょうか。
せめて治療開始前に左下4抜歯を選択していればよかったかもしれませんが、
1年半の治療によって、より難しくなってしまいましたね。

左右で臼歯関係を同じにする必要はありません。
片方をⅠ級、もう片方をⅡ級とすることはよくありますが、それは条件が揃っているときです。
もともと、顎が曲がっていて歯の正中がずれていたり、奥歯の位置がずれているなら適応です。
最初から正中がずれていない、奥歯の位置が左右対称である場合は、左右対称に治すべきです。
左右対称の人を、左右非対称に治療すると、最終的に歯の正中が顔面正中からずれます。
左右非対称の人を、歯の正中を顔面正中に一致させるために、左右非対称に治すのです。

もともと、対称性に治す予定で、すでにある程度治療が進んでいるなら、
現在の歯の正中は顔面正中に一致しているはずです。
この状態から追加抜歯をしたり、遠心移動をすると、そちら側に正中がずれます。
正中がずれてもいいのであれば、途中で方針を転換してもいいかもしれません。

最初に綿密に治療計画を立てているので、順調なら方針は変えない方がいいです。
計画通りに進んでいなければ、軌道修正するために途中で方針転換をすることはあります。
計画通りに進んでいるのを途中で変更すると、仕上がりがおかしくなってしまいます。
実際は、担当矯正歯科医師との相談になるとは思いますが、方針転換はおすすめではありません。