矯正歯科治療で抜歯が必要となる理由
歯並びや咬み合わせの改善
上顎と下顎の咬み合わせがズレている、あるいは上下の大きさやバランスが合わない場合、抜歯を伴う矯正治療が必要になることがあります。
特に、咬み合わせのズレを解消するためにスペースを確保し、歯列を整える必要があるケースでは、抜歯が効果的な方法となります。また、顎変形症など外科矯正を行う場合でも、骨の手術に先立って抜歯が必要になることが一般的です。
このように、抜歯を含む矯正治療は、機能的かつ審美的な改善を目指す上で重要な手段の一つです。
スペースの確保
歯並びの乱れや出っ歯の原因の多くは、顎が小さい、または歯が大きいことで、歯が並ぶための十分なスペースがないことに起因します。このような場合、歯列全体の調和を図るためにスペースを増やす必要があります。
スペースを作る方法は全部で5つあります。
歯を抜く(抜歯)・顎を拡げる(側方拡大)・歯の側面部を削る(ディスキング)・歯を後方移動する(遠心移動)・歯を前に出す(唇側傾斜)の5種類です。歯を抜くのが一番多くのスペースを獲得できるため、でこぼこや出っ歯度合いが強い方や、大きく口元を引っ込めたい方は抜歯矯正の方が望ましいです。
例えば、狭いスペースに無理やり歯が並ぶと、前後にズレたり、重なり合ったりすることで歯並びが乱れます。抜歯によってスペースを確保することで、きれいな歯列を形成し、長期的な安定を目指すことができます。このような矯正治療は、咬み合わせの改善だけでなく、見た目の美しさや口腔内の健康維持にも大きく寄与します。
抜歯をすることのメリット・デメリット
メリット
- 歯を並べるための十分なスペース確保が容易である
- 口元を引っ込めることができ、顔立ちを改善できる
- 治療がやりやすくなり、難易度が下がる
- 歯が骨の中に入ってくるため歯肉が下がりにくくなる
デメリット
- 歯を抜く痛みがある
- 抜歯費用が追加で発生する
- 歯の移動量が増加し、治療期間が長くなりやすい
歯を抜いてしまって問題ないのか
健康な歯を一本でも多く残すことが歯科医師の使命であり、抜歯矯正を提案する矯正歯科医師も同じ気持ちです。抜かずに済むのであれば積極的に抜歯矯正を勧めることはしませんが、世界中で抜歯矯正は行われています。では、歯並びを治すために歯を抜いてしまって良いのでしょうか?ほとんどの方が子供のころから親に、学校の先生に、テレビに、歯医者に、歯を残すように言われ続けていると思いますので、歯を抜くことに抵抗感があるのが自然でしょう。
まず、矯正と関係なく歯を抜くと、歯が無くなって食事もとりにくくなり、咬み合わせも悪くなってしまいます。歯がないまま放置していると周囲の歯が動いて次第に咬み合わせが悪化していくため、歯が無いままにしておくわけにはいきません。なので、一般的には歯が無い部位に歯を入れることになります(補綴)。この補綴処置が歯にとってよくありません。
歯が無い部位に歯を入れるのは部分入れ歯、ブリッジ、インプラントになります。 部分入れ歯は使用感もあまりよくありませんし、できれば入れ歯は進んで入れたいものではありません。
ブリッジは前後の歯削らないとならず、咬む力の負担も増大するため歯の寿命を縮めることになります。また、一生もつものではなく長くても20~30年ほどでダメになってしまいます。歯の寿命を縮め、何度も作り直さないといけないため、できればブリッジをやらずにすむのであればやらない方が良いです。
インプラントはチタン製のネジを骨に植え込み、そこに歯を被せるため前後の歯の寿命を縮めずに済みます。歯の欠損部に歯を入れる場合、インプラントが一番良い選択肢になりますが、外科手術を必要とするのと、自費治療で高額になってしまいます。また、ブリッジ同様に20~30年でダメになってしまうものであり、一度入れたら一生使える保証はありません。
つまり、歯を失った場合、その後に行う人工的な歯を入れるのが良くないわけです。矯正治療の為の抜歯は抜いたスペースは閉じきるため、補綴処置が必要ありません。また、歯が全部ある状態(28本)と歯を抜いた状態(24本)を比較すると、咬む力や歯がどれだけ残るかという点に差は無いとされています。なので矯正治療ための抜歯は大きな問題はなく、健康面での明らかなマイナスはありません。日本人は歯を抜いて矯正治療を行う人の方が多いですが、歯を抜いた方が良い仕上がりになる人の方が多いからです。
ただ、抜くべき人を抜かずに治す、抜かない方がいい人を抜いて治すと、顔立ちを含む仕上がりが悪くなってしまうこともあります。歯を抜くかどうか、何本抜くか、どの歯を抜くかは矯正歯科医師による綿密なプランニングによって導かれるものであるべきです。最初から抜かないことを前提としてしまうと、本来は抜くべき人であった場合に正解を知ることが出来なくなってしまいます。抜くか抜かないかはプランを聞いてから決めれば良いので、歯を抜くことも選択肢に入れて考えてみた方が間違いが起こりにくいでしょう。
抜歯後の注意点・アフターケア
うがいについて
強くブクブクうがいをしないでください。
血餅と呼ばれるかさぶたが剥がれ、抜歯した穴の治りが悪くなり、ドライソケットという状態になってしまうことがあります。
行動制限
以下の行動を控えてください。
- 入浴(シャワー程度は可)
- アルコールの摂取
- 激しい運動
- 喫煙
患部への接触
傷口を指や舌で触らないように注意してください。
歯ブラシもあまりしっかりと当てない方がよいでしょう。
麻酔後の注意
麻酔の影響で1~2時間ほど唇・頬・舌がしびれることがあります。誤って噛まないように気をつけてください。
また、熱さの感覚もマヒしているので熱い食べ物や飲み物でやけどしてしまう可能性もあります。
出血への対応
再び出血した場合は、清潔な脱脂綿やガーゼをしっかり噛み、止血を待ってください。
傷口の感染予防
傷口は感染しやすい状態です。抗生剤を指示通りに服用してください。
※副作用が現れた場合は服用を中止し、抜歯した歯科医院にご連絡ください。
痛みへの対応
麻酔が切れて痛みが出た場合は、痛み止め(鎮痛剤)を指示通りに服用してください。
※あまりにも痛みが強い、薬を飲んでも痛みが治まらない場合、抜歯した歯科医院にご連絡ください。
歯を抜く必要があるか心配な方は一度当院にご相談ください。
歯並び治療において、抜歯が必要かどうかは、正確な検査を行ってみなければ確かな判断はできません。ただし、いくつかの症状や状況によって抜歯が必要となる可能性が高まる場合があります。
例えば、上顎または下顎前突、中程度以上の叢生(歯の重なりが多い状態)、開咬や過蓋咬合といった難症例では、抜歯が治療の一環として必要になる可能性が高い傾向があります。一方で、隙間の多い正中離開や空隙歯列などの場合は、抜歯を必要としないことが多いです。
ただし、上記の難症例であっても非抜歯で治療が可能なケースも少なくありません。そのため、歯並びに関するお悩みがある場合は、まず矯正相談を受診し、ご自身の状態を詳しく知ることが重要です。矯正相談の後で、治療を始めるかどうかをじっくり検討することができます。
当院では、無料で矯正相談を実施しておりますので、抜歯の可能性についてのご不安やご質問がある方は、お気軽にお問い合わせください。