【症例】抜歯矯正~出っ歯~
今回の矯正治療ケースは「ハーフリンガル」です。上下の前歯が出っ歯になり、口元が前に出て「口ゴボ状態」になってしまっているのを、抜歯で治療しています。昨今は白いワイヤーやマウスピース矯正も増加していますが、舌側矯正も根強い人気があります。歯並びを治したいけど目立つ装置は嫌、マウスピースを自分で使い続ける自信もない、という方は裏側矯正という選択肢もありますよ。
主訴 | 口元が出ている、でこぼこが気になる |
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診断 | 上顎前突、叢生 |
年齢 | 28歳(初診時) |
治療装置 | クワドヘリックス、バイヘリックス、マルチブラケット装置(ハーフリンガル)、アンカースクリュー |
使用装置 | 上顎はアリアス(.018)下顎はクリスタブレース3(.022) |
保定装置 | 犬歯間保定装置+ベッグタイプリテーナー(夜間のみ) |
治療期間 | 2年8ヶ月(産休含む) |
治療費用 | 972,000円(税込) |
治療リスク | 咬合時痛、歯肉退縮、歯根吸収、歯髄壊死、後戻り |
前歯が飛び出しすぎて口が閉じられないという患者さん。一般人の方の間では口ゴボと呼ぶようになったそうですね。でこぼこもあり、出っ歯も強い。なおかつ、左下の5番目の永久歯が先天欠如で乳歯が残っています。上は左右4番目、下は左右5番目の歯を抜歯して矯正治療をする方針にしました。ご本人の希望として、なるべく目立たないようにしたいということで、上は舌側矯正(裏側)、下は唇側矯正(表側)をミックスしたハーフリンガルを選択されました。裏側矯正は費用も高く、舌が当たる違和感も強くなります。下の歯は唇でそもそもあまり見えないので、下を表側矯正にすると費用や違和感を抑えられます。抜歯だけでは十分に前歯を後退させるだけのスペースが作れないだろうということで、上下の顎を横に拡げてスペースを獲得する、拡大治療も追加することにしました。上顎はクワドヘリックス、下顎はバイヘリックスを装着します。成長期ではないものの、成人でもある程度は顎を拡げることが可能です。力を加えた装置を奥歯に接着し、ジワジワを顎を横に拡げていきます。かなり違和感が強く、しゃべりにくくなるのが要注意ですが、次第に慣れてくるでしょう。十分拡がったら外します。上顎はリンガルブラケットを装着しますが、裏側矯正の弱点として、下の前歯が上の前歯のブラケットに当たってしまいました。咬み合わせもおかしいですし、ブラケットにばかり歯が当たり続けるとブラケットが外れてしまいます。なので奥歯にレジンを盛り、奥歯しか当たらない状態にすることで、リンガルブラケットを守ります。これをバイトアップと言います。裏側矯正では多くの場合にバイトアップが必要になります。奥歯しか当たらないので、違和感もありますし、食事もこの状態で摂ることになります。食べにくくなりますが、だんだんと慣れてくるでしょう。ブラケットが下の歯と当たらなくなったらレジンを除去します。ブラケットをつけたら抜歯をしますが、抜歯した部分は当然歯抜け状態になります。表側矯正であれば矯正器具が見えるので、「矯正のために抜歯したんだな」と見た人もわかります。裏側矯正だと、そもそも矯正器具が見えないので、「この人はなんで歯がないんだろう」と見た人が疑問に思うかもしれません。目立たない矯正を選んだのに、歯抜けだと逆に目立ってしまいます。なので、歯抜け状態にならないように、隣の歯に仮の歯を接着し、歯があるように見せかけましょう。抜歯した直後に仮歯を接着し、一瞬たりとも歯抜け状態にならないようにします。歯が動いてくると邪魔になるので、歯の動きに合わせて少しずつ仮歯は削って行きます。削りやすいように薄いハリボテになっています。もう無くても平気だろうとなったら完全に仮歯は除去します。食べるためのものではないので、力がかかると外れてしまうので注意しましょう。歯が無くなってしまった、というのは患者さんにとってショックが大きいことです。仮歯をつけてあげるととても喜んでいただけます。希望する方には表側矯正や小児矯正などでも仮歯をつけたりしています。