医院名:マロニエ矯正歯科クリニック 
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矯正コラム

2022.07.09

動いていない歯について

質問

矯正を始めてから4年半です。
最初はインビザラインで、ワイヤーに移行しました。インビザラインを始める前に上下第一小臼歯、計4本抜歯し、3年半ほどで全てのインビザラインを終了しました。しかし、オーバーバイトが改善されなかった為(インビザライン終了時、下の歯は上の歯に被さって隠れたまま、左右1-3番は上下で接触しない)、ワイヤーに移行し、現在に至ります(9ヶ月目)。ワイヤーは上の歯のみです。
ですが、ワイヤーを始めた頃の口腔内の写真と現在の歯を比べても、この9ヶ月全く歯が動いていないように思います。矯正医は色々な方法を試しているようですが、全く変化がありません。前置きが長くなりましたが、
1、インビザラインからワイヤー矯正に移行することはよくあることでしょうか。

2、歯が動かないことはありえますか?骨性癒着は歯全体、又は前歯4本で起こる可能性はありますか?

4、治療法の一つとして、上2本のみの抜歯もあると知りました。この抜歯はオーバーバイトの治療として効果的ですか?下を抜歯しなかったら、インビザライン終了時には治療も終了していたのではと思ってしまいます。

 

回答

上下抜歯のマウスピース矯正でうまくいかず、ワイヤーに切り替えても変化が見られないとのことですね。
マウスピース矯正からワイヤー矯正に切り替えたり、
逆にワイヤー矯正からマウスピース矯正に切り替えるケースはよくあります。
上下抜歯のマウスピース矯正は咬み合わせが崩れやすく、立て直しが必要になることが多いです。
本来は、マウスピース矯正をやりながら、同時に立て直しを出来ていればよかったのだと思いますが、
十分な立て直しをせず(しようとしたけどうまくいかず)、3年半で治療が詰んでしまったのでしょう。
ワイヤーでの立て直しをするのであれば、上下顎全体にやった方が良いような気がします。

マウスピース矯正での上下抜歯は難易度が高いので、あまり推奨されません。
適切な方法で、適切に治せば可能ですが、失敗するリスクもあります。
なぜ、マウスピース矯正の上下抜歯が難しいかというと、「レールが無い」からです。

歯は骨に埋まっていて、その重心(抵抗中心)は骨の中にあります。
物体は重心を押せば、まっすぐ移動しますが、重心からずれた位置を押すと傾いて移動します。
矯正治療では、歯の重心を押したくても、生えている歯冠部分しか押せません。
なので、何も考えずに歯を押すと、歯は倒れこみながら移動してしまいます。
歯は咬む力にまっすぐ抵抗するため、まっすぐに並んでいるのが理想です。
ワイヤー矯正は、硬いワイヤーがレールになってくれるので、歯が平行移動します。
マウスピース矯正は、上からはまっているだけなので、倒れこんで移動してしまいます。
上だけの抜歯では、あまり倒れこみは生じませんので、上だけ抜歯のマウスピース矯正は、難しくありません。
ネット上に公開され、早く良く治ったとされているのは、だいたいが上だけ抜歯ケースです。

上下の抜歯だと、下の5・6が倒れこみやすく、同時に前歯が挺出しやすいです。
これは、ワイヤー矯正でも起こりやすいことですが、「ローラーコースター現象」といって、
抜歯したスペースを閉鎖しようするとだんだん咬み合わせが深くなって、ディープバイトになってしまいます。
ワイヤー矯正では、ワイヤーを調整し、このローラーコースター現象を改善できます。
マウスピース矯正でも立て直しは可能ですが、ワイヤー矯正よりもやりにくいです。

マウスピース矯正はクリンチェックといって、歯の動き方を最初に設定し、
歯が計画通りに動くようにプランニングします。
クリンチェック通りにすすんでいれば、マウスピースは浮きませんが、
歯が計画通りの動き方をしていないと、マウスピースが歯から浮いてしまいます。
一度歯から浮いたマウスピースは、そうそうリカバリーできませんので、マウスピースの作り直しになります。
リクワイヤメントといって、歯のスキャンを行い、またマウスピースを再作製して仕切り直しします。
歯が倒れこんでくると、マウスピースが浮き、放置しているとどんどん倒れこんでしまうので、
歯の倒れこみを見つけたら、すぐに再スキャンして立て直す必要があります。
そもそもクリンチェックと全く同じように歯が動くことはなく、順調でも3~5回くらいは再作製するものです。

通っている歯科医院で、マウスピースは何回作り直しましたか?
浮いていることは指摘されましたか?浮いたら早期に再スキャンを行っていましたか?
適切なタイミングで立て直しをして来なかったのであれば、上下抜歯マウスピース矯正はどんどん悪い方に進みます。
立て直しの方法として、ワイヤー矯正に移行する方法もありますが、手遅れになる前の方が良かったでしょう。
軽度の崩れであればマウスピースでも立て直せますし、ワイヤー矯正で立て直ししてもマウスピースに戻れたでしょう。
担当医も、どんどん奥歯が倒れ、咬み合わせが深くなっていくのを見届けていたと思いますが、対処が遅かったかもしれません。

また、上下抜歯マウスピース矯正では、患者さん側も守らないといけないことがあります。
「指示通りに、毎日一切サボらずに20時間以上マウスピースを使用する」
「治療の最初から最後まで顎間ゴムを毎日欠かさず20時間以上使用する」
「アライナーチューイーをしっかりと咬みこみ、マウスピースの浮きを予防する」
「指定されたマウスピースの交換ペースや通院ペースを守る」
どれもマウスピース矯正を行う上で説明される、当たり前の注意事項となりますが、
特に、顎間ゴムの使用がとても大切です。それがすべてです。
歯が倒れこまないようにするのも、リカバリーをするのも、顎間ゴムで行います。
マウスピース本体もそうですが、顎間ゴムの使用状況が芳しくなければ、抜歯マウスピースは失敗します。
担当医の指示や治療計画が正しくても、マウスピースを扱う患者さんのコンプライアンスが不良であれば、
どんな名医であっても、特に上下抜歯マウスピース矯正は、うまく治すことは出来ません。
天地神明に誓って、完璧にマウスピースを使っていたのでなければ、現状の原因は質問者様にもあるかもしれません。
ただ、そんなことは質問者様自信は知る由もないことで、コントロールできなかった担当医の落ち度とは思います。

そもそも、咬合わせが深かったり、奥歯がずれて出っ歯であったりしてもマウスピース矯正の難易度は上がります。
進化とともにいろんなケースに対応できるようになってきているマウスピース矯正ですが、
得意なケースと不得意なケースがあり、不得意なケースで使用する場合は、工夫が必要になります。
おそらく、質問者様は不得意なケースで、担当医は立て直す経験が不足していたのでしょう。

質問にお答えします。

1、インビザラインからワイヤー矯正に移行することはよくあることでしょうか。

よくありますが、うまくいかなかったときですね。マウスピース矯正単独で難しく、ワイヤーを併用する場合は、
先にワイヤー矯正である程度治してから、マウスピース矯正へ移行するパターンとなります。

2、歯が動かないことはありえますか?骨性癒着は歯全体、又は前歯4本で起こる可能性はありますか?

動きにくいことはあっても、動かないことはないでしょう。ここまで歯が動いてきているわけですから。
骨性癒着で動かないのは、最初から微動だにしません。途中で骨性癒着する可能性はほとんどないでしょう。

3、が無いのは、サイト側から消されてしまったのでしょうか。費用などについては答えられないことになっています。

4、治療法の一つとして、上2本のみの抜歯もあると知りました。この抜歯はオーバーバイトの治療として効果的ですか?下を抜歯しなかったら、インビザライン終了時には治療も終了していたのではと思ってしまいます。

上だけ抜歯の方が、崩れにくく治しやすいですし、移動量も少ないので確実に早く治るでしょう。
しかし、治療のプランとして上だけ抜歯はあり得なくて、上下抜歯か非抜歯しかなかったかもしれません。
下の歯を抜かなければ前歯の後退量も減り、口元もあまり引っ込みません。
マウスピース矯正かどうかの前に、適切なプランニングがあるはずです。
上だけ抜歯の人たちは、上だけ抜歯がベストプランだっただけであり、質問者様は選べなかったかもしれません。

オーバーバイトばかりを気にしてますが、オーバージェットはどうでしょうか。
正面から見た上下の歯の重なりはぱっと見わかりやすいですが、
前歯の前後のずれであるオーバージェットの方が重要です。
現状、前歯が当たっていないということですが、咬み合わせが深いだけなら前歯は当たるはずです。
そもそも、奥歯が前後にずれていて、前歯が出っ歯になっているのではないでしょうか。
オーバージェットも大きいとなると、上下にただワイヤーをつけても前後のずれは治りません。
なので、ワイヤー矯正で立て直すとしても、まだまだ時間はかかってしまうと思います。
上の歯だけにしかワイヤーをつけていない段階で、いつまでたっても咬み合わせは改善しないと思います。
ずれの程度が強い場合は、上顎の遠心移動なども必要かもしれません。歯のディスキングも有効でしょうか。
立て直すのであれば、しっかりがっつりやらないと効果は出ませんので、担当と相談しましょう。
担当医の矯正歯科医師としての実力に疑問があるとしたら、他院でのセカンドオピニオンなどもご検討ください。