医院名:マロニエ矯正歯科クリニック 
住所:〒340-0034
埼玉県草加市氷川町2128-2ベラビル2階 
TEL:048-959-9087

矯正コラム

2022.07.06

反対咬合の第二期治療開始時期について

質問

乳歯列の頃に反対咬合だったためフェイシャルマスクで第一期矯正治療を行いました。 
2ミリ程度被っていた前歯が最近になって切端咬合になってきたので矯正歯科を受診すると、下顎が大きくなってきているので最終的に歯を並べる治療が必要だが、受験時期なのでいつ二期治療を開始するかは本人に任せると言われました。
息子は16歳ですがまだ父親の身長にも届かないのでまだ成長が残っている=下顎も成長するかと思われます。
息子は噛む力が強いタイプらしく奥歯が噛み合っている力により、成長してもそこまでひどい受け口にはならないだろうと言われてきましたが、いま第二期治療を開始して奥歯の噛み合わせを緩めることで、ストッパーが外れ下顎の成長を助長させてしまうことはありますか?
そうであれば(最終的にはきれいに調整していただけるとは思いますが、)矯正をすることで逆に受け口の骨格を後押ししてしまうことになり不安です。 

回答

下顎前突のお子様の2期治療開始時期を検討中ということですね。
ズバリ、受験後が良いと思います。18歳以降に開始するのが理想ではないでしょうか。

女性は15歳、男性は18歳まで下顎が伸びると言われています。
たまにレイトグロースと言って、20歳くらいまで伸びる人もいます。
私自身もレイトグロースが生じたようで、18歳時と20歳時で少し顔が違いました。
正直、18歳時の顔の方が好きでしたが、成長なので仕方がないでしょう。

人間は生まれてから成人になるまで、成長とともに徐々に顎が伸びます。
6歳までは上顎の方が伸びがいいですが、6歳以降は下顎の方が伸びます。
つまり、6歳以降は下顎前突は悪化する一方であるということです。
フェイシャルマスク(上顎前方牽引装置)は6~8歳が適齢期ですので、
お子様が経験された1期治療の方針は正しかったと思います。
ただ、乳歯列期に反対咬合が改善しても、成長ともに下顎前突が再発してしまうのはよくあります。

下顎前突の方は、大半が低位舌や舌突出癖を併発していて、
舌で下の歯を押すことで受け口化を助長してしまいやすいです。
そもそも成長のいたずらとして、遺伝子に組み込まれていて避けがたい運命だったとも言えます。
歯並びや骨格というのは、癖や生活習慣の影響も多少あるものの、ほとんどは生まれながらに決まっています。

咬む力が強くて、というのが顔面形態が四角い顔(ブラキオフェイシャル)であり、
前歯の咬み合わせも深くなっていると下顎成長をロックしてくれるだろうという見立てだったわけですね。
しっかり咬んでいると、咬み合わせが変化しにくいこともたしかにあります。
しかし、顎骨の成長の力の方が強いので、確実に成長を予測することなど不可能と言えます。
1期治療の効果で、ある程度は下顎の成長を抑えられたかもしれませんが、
お子様が現状、やや下顎前突で切端咬合になってしまったのは、なるべくしてなったと言えるでしょう。

質問者様の言う通り、矯正治療をすることで、一時的に咬み合わせがフワッとします。
崩れているなりに咬んでいた咬み合わせも甘くなり、咬合時の痛みもあってあまり咬まなくもなります。
咬み合わせが浮いてくると舌癖も生じやすくなりますので、下顎の成長を加速させる可能性があります。
しかし、矯正治療を開始しなくとも、すでに切端咬合になってしまっております。
前歯の重なりが無くなっているということは、そもそも下顎の成長を抑えられない状況になっています。
なので、今矯正をやってもやらなくても成人した時の骨格には大きな差異はないと思います。
受け口になりやすくなるかも、というのは開始時期を決めるうえで重要ではない、ということです。

では、いつ始めるのかを考えた時、治療のやりやすさを重視しましょう。
最近受け口が強くなってきた、ということであれば今後もまだ伸びるだろうと予想されます。
まだ成長余地がある段階で治療を開始すると、治療中に咬み合わせが随時変化していってしまいます。
治療開始時の骨格や奥歯の位置から治療計画を立てますが、その根底が崩れる可能性があります。
例えば、歯を抜かずに進めていたが、追加で下の歯を抜かなければならなくなったり、
逆に、上下で歯を抜いて開始していても、上の歯を抜かない方が良かった、なんてことになってしまいます。
奥歯の位置を正常な位置に治すと、最終的に正常かつ良好な咬み合わせになりますが、
下顎の成長とともに、奥歯の位置が治りにくい方向に変化していってしまいます。
見切り発車で治療を開始すると、変に難易度が上がってしまったり、治療期間が延びてしまいます。

大体、2期治療開始時期というのは、成長を考えなければ永久歯が生え切る12歳ごろが一般的です。
16歳まで2期治療をしてこなかったのであれば、あと2年待ちましょう。
完全に下顎の成長が止まっていれば、前述の成長による変化も生じず、治しやすいです。
本当に一番安全なのは20歳からですが、レイトグロースはそこまで激しくないので、18歳でも大丈夫でしょう。

また、2期治療は抜歯・非抜歯に関わらず、2~3年かかるものと思ってください。
つまり、今初めても高校生の間には終わらず、受験期も通院する必要があります。
治療開始してある程度経過していれば、慣れてきて勉強への影響もないと思いますが、
高三の冬頃などから受験を考慮して通院を一時停止させたりします。
治療が一時的に停止する、ということは、総治療期間が延びるということです。
高校生の間に終えたくば、高一から始めておく必要があったということになります。

高校生の間に終えるなら、15歳から。これは間に合いません。
写真に残る成人式に間に合わせるなら、今すぐ。成長要素は未知数です。
安全に開始しつつ就職活動に間に合わせるなら、高校卒業から。
完全に安全に開始するなら、20歳から。ただ、大学卒業に間に合いません。
矯正治療は数年かかるため、様々なライフイベントと重なってきます。
いつまでに終わらせるか、という目標から逆算して、治療開始時期を決めましょう。
ただ、未成年期では成長による変化もありますし、成長が止まってから開始したとしても、
やってみたら時間がかかり、実際の治療期間は3年を超えるかもしれず、予定通りにならない可能性もあります。

質問者様はお子様の顎がもっと伸びるのでは、ということを懸念していらっしゃますが、
これは避けようがなく、確実に今よりは伸びるものと思ってください。
下顎以外にも、顔面は成人に向けて変化していきますので、今の顔が完成形ではないのです。
なので、顔が変わる点はどうしようもなく、ある意味心配の必要はありませんが、
治療開始時期によって治療の難しさも変わりますし、いつまでに終わるかが変わります。
成長と受験の影響なく、就職前に完了させるとするならば、高校卒業してから始めるのがおすすめです。