医院名:マロニエ矯正歯科クリニック 
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矯正コラム

2022.07.05

インビザライン矯正でEラインを整える方法

質問

私は1ヶ月前から、オープンバイトを治すためにインビザライン矯正を行なっています。上の親知らず2本と下の親知らずを一本を抜歯しました。また、歯を少し削りました。
Eラインを整えたいのですが、親知らずの抜歯のみで整えることはできるのでしょうか?

Eラインを整えたいと伝えたら、矯正中でも抜歯してもらえるのでしょうか?

回答

非抜歯でインビザライン治療中ということですね。
開咬(オープンバイト)とインビザラインは非常に相性が良く、
私も開咬の方にはワイヤー矯正よりもインビザラインを勧めることが多いです。
開咬を改善するためには奥歯を圧下(歯を歯茎に沈める動き)させる必要があり、
インビザラインは装着時に上下のマウスピースの奥歯部分が接するため、
奥歯の圧下がとてもやりやすく、従来難症例であった開咬が簡単に治るようになりました。
インビザライン治療中に抜歯矯正に切り替えることは可能ですが、
本当に切り替えるべきか、というのは慎重に判断するべきだと思います。

抜歯以外の方法でもスペースを作ることが可能なので、多少はEラインを改善できます。
歯の側面部を削るディスキングもスペース獲得に有効ですし、
マウスピースで上下の顎を側方拡大したり、遠心移動することもできます。
また、開咬改善のための臼歯圧下は、オートローテーションを起こします。
奥歯の上下的な接触がなくなると、下顎骨全体が少し前に移動します。
下顎の先端も前方に移動するので、Eラインが移動して相対的に多少口元が下がります。
ただ、ディスキングも側方拡大も遠心移動もそこまで大量にスペースが作れるわけではありません。
前歯をたくさん後退させ、口元をドカンと引っ込めるにはやはり抜歯が有効です。

インビザライン治療で抜歯治療というのは、一般的には難しいとされています。
でこぼこが強めであれば、前歯の移動量が減り、難しくはありません。
でこぼこがほとんどない、いわゆる口ゴボ状態であるなら、やや難しくなります。
抜歯した空間は、歯を動かして閉鎖しますが、歯を平行移動して後退させます。
歯は釘と一緒で、まっすぐに直立している状態が咬む力を受けやすく、理想的です。
矯正治療が終わった後も、すべての歯がまっすぐ平行に並ぶようにします。
抜歯後に歯を後方移動させる際、平行移動させるのがマウスピース矯正は不得意となります。

歯は骨に埋まっていて、その重心(抵抗中心)は骨の中にあります。
重心を押せば、平行に移動できますが、骨の中の重心は押すことが出来ません。
生えている歯冠という部分しか押せないので、普通に歯冠を押すと、歯は倒れこんで移動します。
人間が立っていて、腰を強く押されると踏ん張れますが、肩を強く押されるとよろけてしまいます。
ワイヤー矯正であれば、ワイヤーがレールになってくれるので、歯が倒れずに平行に移動します。
マウスピース矯正は、上からマウスピースがハマっているだけなので、倒れこみやすいのです。
歯が倒れこんでくると、咬み合わせが悪化し、治療の立て直しが必要になります。
口ゴボタイプの抜歯矯正をインビザラインでやると、だんだんと歯が倒れてきます。
倒れこみとリカバリーを繰り返しながら、えっちらおっちら進めていくことになります。
「いかに倒れないようにするか、いかにリカバリーをするか」という知識や技術が、
インビザライン治療を行う矯正歯科医師に要求されます。
経験の浅い先生だとうまくいかないこともありますので、担当の先生に出来るか聞いてみましょう。

また、抜歯すべきか非抜歯で治すか、口元をどうするかということに関して、相談はしていないのでしょうか?
つまり、セファロレントゲンを撮り、セファロ分析を行い、VTO(治療プラン)の提示はなかったでしょうか。
インビザライン治療を行う歯科医院では、横着してセファロ分析を行わないところも多いです。
スキャンマシン(アイテロ)またはPC上で歯の動きを設定している、クリンチェックは診断ではありません。
矯正治療で歯を動かすと、前歯の位置が変わり、口元も変わり、顔も変わります。
最終的にどのような顔立ちにするか、前歯をどれだけ下げるかというのは、セファロ分析でしかわかりません。
矯正の知識がないからそもそもセファロ分析が出来ない、出来るけど面倒でやらない、
という歯科医師が散見され、そういう歯科医師がインビザライン治療をよく行っています。
何が言いたいかというと、下手に抜歯矯正を行うと、口元が下がりすぎるかもしれないということです。

セファロ分析から、顔立ちを基準としてどれだけ前歯を引っ込めるかを設定し、
前歯の後退量を決めたうえで、クリンチェックを行わなければ、狙った仕上がりにはなりません。
「ノープランでとりあえず抜歯して歯を引っ込めた」場合、どんな顔になるか誰もわかりません。
Eラインよりも口元が引っ込むと、印象として、老け顔で貧相な顔になります。
質問者様が本当に抜歯すべきなのか、抜歯したうえでベストに治すにはどうするべきなのか、
というのは、あてずっぽうではなく、正式なセファロ分析が必要です。
「だいたい前歯が引っ込めば顔がどんな感じでも受け入れられる」のであれば、
とりあえず抜歯して、とりあえずスペースを閉じても良いでしょう。

非抜歯で治療する方針に決定した時、セファロ分析があったか、非抜歯では口元がどうなるのか、
抜歯プランの提案があったのか、適切な説明と、それに対する同意はありましたか?
ワイヤー矯正をやっておらず、インビザライン治療しかやっていないような歯科医院では、
おそらくセファロ分析なども行っていないでしょうし、ほとんどのケースを非抜歯でやっているのではないでしょうか。
根拠なく抜歯矯正をするのは危険ですので、慎重になりましょう。
本来は、抜歯か非抜歯かというのは治療開始前に決めておくものです。
非抜歯矯正で前歯がある程度後退するという前提で治療を開始していて、
ある程度治療が進んでも思っていたよりも後退していないため、抜歯を希望するのであればわかります。
非抜歯で始まったばかりで質問者様が抜歯を考え出すとなると、
治療開始前の検査診断やディスカッションが十分でなかったのだろうと予想されます。

抜歯矯正を適切に治せる先生であれば、提案すれば抜歯矯正に切り替えることも可能だと思います。
しかし、抜歯して本当に希望通りの仕上がりになるのかどうか、
ということに関しての適切な検査があるかを確認した方が良いでしょう。
ネットを調べれば、抜歯矯正で口元が引っ込みすぎて残念に思っている方がたくさんいるはずです。
特に、インビザラインは流行に乗って利益のために導入する歯科医師が激増しています。
顔が変わるということは、一生を左右することなので、慎重に行動しましょう。
今度こそしっかりと担当医と話し合い、十分に納得したうえで選択しましょう。
抜歯矯正に切り替える際は、マウスピースを一から作り直すことになります。
抜歯矯正の場合や、マウスピースの再作製に関して別途費用を取る歯科医院もありますので、
その点についても注意しながら、担当の先生に聞いてみましょう。