医院名:マロニエ矯正歯科クリニック 
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矯正コラム

2022.07.02

歯列拡大について

質問

私は、下顎より上顎の幅が狭く、上顎はワイヤーとゴムがけで広げています。クワドヘリックスは使っていないのですが、使う、使わないは先生の方針の違いなのでしょうか?嘔吐反応が強いので、使わないで治せるのならその方がいいのですが、広がるのか心配になってきました。少しは広がってきたのですが。それと下は奥歯が少し内向きになるとのことだったんですが、よくクワドヘリックスとバイヘリックスで上下どちらも歯列を広げてる方がいますが、それはどちらも歯列が狭い場合でしょうか?私みたいに下の方が歯列が広い場合は下の奥歯も起こし過ぎたら噛み合わなくなってしまうのでしょうか?

回答

上下の幅が合わないため、上を拡げようとしている。
クワドヘリックスを使用しないでいいのか?
下を内側に倒しこんでいいのか?ということですね。
これは、「顎」と「歯」を別々に考える必要があります。
我々もとりあえず「顎を拡げる」という表現を使ってしまいますが、
質問者様はおそらく「顎の幅は狭いが、顎を拡げるべきでない」という状況にあります。

まず、顎の幅が上下で合わないことはあります。
これは生まれついてのもので、奥歯も交叉咬合という状態になります。
前歯も奥歯も上の歯が外側に来ているのが正常な咬み合わせですから、
上の奥歯を外側に動かしたり、下の奥歯を内側に動かしたりして改善します。
この時に、クワドヘリックスなどを併用したりします。

そもそも、顎が拡げられるのは成長期の子供のみです。
成人は骨の成長が止まっているので、基本的には拡がりません。
本来的には、小児期に拡大床・クワドヘリックス・急速拡大装置などを使用し、
顎骨に側方への力をかけて拡げていきます。
ただ、顎と言っていますが、実際は歯が埋まっている歯槽骨が拡がっています。
急速拡大装置に関しては、正中口蓋縫合が拡がり、顎骨自体が拡がっているとされていますが、
実際は75%ほどは歯槽骨が拡がっています。そうそう顎は拡がりません。
昨今では、アンカスクリューなどを併用して本当に顎骨を広げるような治療法が試されていたりします。

ある程度は、歯槽骨が拡がりますが、限界があります。
側方拡大の限界を超えて拡げようとすると、歯が外側に倒れこんで行きます。
外側に倒れこみすぎると、上下の歯の咬み合わせがうまく咬まなくなります。
よって、無理に広げると咬み合わせにとっては良くないということです。

では、成人で側方拡大を行うとどうなるのか。
ほんの少しであれば歯槽骨も広がることもありますが、ほとんど歯が外側に向いていきます。
前述のように、上下の咬み合わせが悪化するかもしれませんし、
歯が歯槽骨から飛び出していくことになるので、頬側の歯茎が減ってしまします。
年齢的に、質問者様は歯肉退縮もある程度起きていることでしょう。
無理な上顎側方拡大により、歯肉退縮が悪化するリスクがあるため、
担当している矯正歯科医師は積極的な拡大をしないのだと思います。

そうなると、交叉咬合を改善するためには、下の奥歯を内側に入れ込むことになります。
上が外側に傾きすぎると咬み合わせが悪化するように、下も倒しこみ過ぎはよくありません。
ただ、そう治すのが、歯肉退縮のリスクが低く、無理が無いということです。
多少であれば、歯が倒れこんでいても咬み合わせ的に問題はありません。
交叉咬合のままでいるよりも、少し歯を倒しこんだ方が良い咬み合わせになると判断したのでしょう。

その際に、上のアーチワイヤーを広げたり、下のワイヤーを縮めたりしますし、
上の歯の内側と、下の歯の外側にかけて交叉ゴムという顎間ゴムをかけたりします。
交叉ゴムはひっかけにくいですが、倒しこんで交叉咬合を治すのが得意です。
クワドヘリックスを使用していると、ゴムがかけられなくなったりするので、使用しないのかもしれません。

バイヘリックスを使うかどうかについてですが、
側方拡大の目的が、スペース確保のためなのか、幅の一致のためなのかで変わります。
幅の一致のためであれば、下を広げる必要はありませんし、
むしろ下が拡がってしまう分、上をもっと広げなくてはなりません。
若年者であれば、上下拡大をやることもありますが、
成人している場合は、たいして広がらない可能性もありますし、歯肉退縮のリスクも大きくなります。

なので、上下拡大を行うのは、そもそも交叉咬合の方ではなく、スペース確保のためです。
でこぼこや出っ歯の原因は、歯が大きかったり、顎が狭かったりしてスペース不足になっているからです。
抜歯などもスペース確保のために行いますが、側方拡大もスペース獲得方法のうちの一つです。
ネット上でクワドヘリックス・バイヘリックスを使用しているとある方たちは、
質問者様のような交叉咬合ケースではなく、非抜歯だけどなるべくスペースを作りたい、
もしくは抜歯ケースだけど、抜歯だけでもスペースが足りないから側方拡大も行っているパターンです。
歯並びの状態によって、やるべきことや使う装置は異なります。
拡げる→クワドヘリックスを使う→バイヘリックスも使う、と発想されたのだと思いますが、
質問者様でバイヘリックスを使うことはないでしょう。余計難しくなります。

側方拡大のやり方についても様々な方法があり、担当医の考え方や好みによっても左右されます。
40代の交叉咬合ケースにクワドヘリックスを使うかどうかというのは、意見が割れるところだと思います。
問題が無いと思われますので、現状の治療方法でうまく治ると思いますが、
「下の歯が内側に倒れるのが嫌だ」「上顎をちゃんと広げて治したい」
「上の奥歯が外側に傾斜して咬み合わせが甘くなるのが嫌だ」
ということであれば、方法が一つだけあります。

SARPEという方法を検索してください。成人に急速拡大装置を使うという方法です。
正中口蓋縫合が完全に癒合する前の小児期に使用するのが本来の急速拡大装置です。
成人でも歯槽骨ではなく、上顎骨自体を拡げようとするなら、口蓋の正中に切れ目を入れます。
もちろん、全身麻酔下で行いますが、外科処置後に急速拡大装置を使用すれば、
本当に「顎」が拡がりますし、上の奥歯も外に傾斜せず、下の奥歯も倒さないで大丈夫です。
なので、交叉咬合を「歯」を傾けて治すのではなく、「顎」を拡げて治すのであれば、
質問者様がやるべきはクワドヘリックスではなく、SARPEです。
「歯は傾けるべきでない、拡大は骨ごとやるべき」という考えの矯正歯科医師が好んで行います。
ただ、手術を併用となると大変ですし、質問者様もそこまで望んではないのではないでしょうか。

矯正治療のやり方は、いろんな方法があります。
矯正歯科医師の考え方や、能力、経験などにより、どれを選択するかが変わります。
また、ケースによっても治療法の向き不向きがあるので、すべての人に適応されるわけではありません。
クワドヘリックスを使用している人は、担当医がクワドヘリックス使う派で、適応症だっただけです。
現在担当している先生の考えがあるはずなので、一番は直接聞くことですね。
うまく治るか不安ということですが、治らなければ担当医も他の方法を試すと思います。
最初に決めたやり方で効果が出なければ、他のやり方に軌道修正してくれると思います。