医院名:マロニエ矯正歯科クリニック 
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矯正コラム

2022.05.28

抜歯について

質問

歯列矯正で4番目の抜歯が必要といわれました。5番目の歯の神経を抜いてます。5番目を抜歯したいと伝えたところ、歯のバランスなど取りにくいと言われました。治療期間も長くなるし、上の歯がズレるかもしれないと。私は、30代で神経を5本抜いてます。この先歯がなくなることを考えると怖いです。

回答

生きている歯と死んでいる歯の抜歯部位選択は矯正歯科医師も悩むところです。
過去の私の回答に詳細に説明しているものがあるので、参考にしていただければと思います。

https://www.kyousei-shika.net/consult/reply/17598/

基本的に、神経を抜いた歯は寿命が短いので、優先的に抜歯すべき歯と思われます。
すでに5本神経が無いということですが、抜歯矯正によって数本処分できる可能性があります。
4本抜歯して24歯の咬み合わせに持っていくとして、そのうち何本が神経のない歯になるのか。
抜歯矯正後に歯が欠損すると、矯正で隙間を埋めることが出来ませんから、補綴処置が必要になります。
部分入れ歯か、ブリッジか、インプラントか、費用もかかるし、デメリットもあります。
神経を抜いた歯を減らせば、歯の欠損のリスクを減らし、今後の歯科費用も減らせるわけです。

4番抜歯と5番抜歯について説明いたします。
多くの場合、出っ歯を下げる、もしくは前歯のでこぼこを改善するために抜歯矯正を行います。
前歯の方にスペースが欲しいので、より前にある4番を抜歯します。
細かい話ですが、下4番と下5番は形が違い、下5番の方がしっかりしています。
特に理由が無ければ、通常は4番を4本抜歯します。

では、5番を抜くとどうなるか。
まず、治療のステップが一つ増え、治療期間が延びます。
4番抜きの場合、
でこぼこを治す→犬歯を下げる→前歯を下げる→仕上げ、の4ステップです。
これを5番抜歯にすると、
でこぼこを治す→4番を下げる→犬歯を下げる→前歯を下げる→仕上げ、の5ステップになってしまいます。
純粋に4番を移動させる手間が増え、治療期間が半年~1年延びます。
4番抜歯矯正が2年半前後かかるとして、5番抜歯矯正は3年を超えてきます。

上下の同一歯を抜く(上4下4)を抜歯するのであれば、上下の歯は干渉せずに動きます。
これを、上5下4にしてしまうと、上4を後退させるときに下5とぶつかってしまいます。
我々は「山越え」と言っていますが、干渉する歯を乗り越えるのは難しく時間もかかります。
やるべく山越えはしたくないので、こういう場合は上5下5抜歯の方が治しやすかったりします。

4番と5番の形はほぼ一緒なので、2抜歯や3抜歯などと比べるとそこまでバランス調整は難しくありません。
しかし、下4番は犬歯っぽく、下5番は大臼歯っぽい形をしています。
下5番を抜くと下4番と下6番の連続性は甘くなり、咬み合わせをやや作りづらいというのはあります。
かなり細かい話になりますが、咬み合わせに強いこだわりを持つ先生は5番抜歯を嫌う人もいます。

矯正治療後に後戻りをすると抜歯部位に空隙が生じてきますが、5番抜歯だと4・6間に空間が生まれます。
前歯のみを抑えるタイプのリテーナーが使用できなくなるので、
担当する先生のリテーナーの好みによっては5番抜歯を選ばない先生もいるでしょう。

なんでもかんでも4番4本抜歯ではありません。
奥歯のずれがある場合は5番抜歯にした方がやりやすいこともあります。
出っ歯気味の人はⅡ級という奥歯の位置関係であり、この場合は上4下5抜歯の方が良いこともあります。
逆に、受け口気味の人はⅢ級になっていて、上5下4抜歯の方が治しやすいこともあります。
最終的に奥歯の位置をⅠ級に持っていくために、あえて5番を抜歯するのです。
出っ歯の人で上5下4抜歯、受け口の人で上4下5抜歯にすると、難易度が跳ね上がります。
失活歯か生活歯かは別にして、治しやすい抜歯部位というのがあります。

4番抜歯ではなく5番抜歯を行うと、奥歯が前方移動しやすくなります。
奥歯が理想的な位置よりも前に移動しすぎると、最終的に出っ歯や受け口になってしまったり、
最終的な前歯の正中がずれて仕上がってしまいます。
もちろん、そうなることは矯正歯科医師は理解しているので、そうならないように対策を講じます。
奥歯が前に移動しないように、歯科矯正用アンカースクリューを併用する可能性があります。

5番抜きでもやり方はありますが、手間と時間と費用がかかります。
定額制の矯正歯科でない限り、治療難度が上がったり、通院回数が増えたり、追加装置が増えると、
おそらく矯正治療費用も高くなる矯正歯科が多いのではないでしょうか。
5番抜歯を選択すると、治療が難しくなり、時間もかかり、お金もかかるということです。

上記のことを、担当の先生は説明しているのだと思います。
5番抜歯は大変さが増すことを理解したうえで、どうするべきか。
それは矯正歯科医師との話し合いで決めていくことだと思います。
まだ、治療前、抜歯前であれば方針を変えることが出来ます。
決めるのは、質問者様ですので、納得しく治療法を自分で選びましょう。
担当医と意見が合わないようでしたら、転院やセカンドオピニオンもいいと思います。

色々な考え方の矯正歯科医師がいまして、その選択はとても重要です。
神経が無い歯を抜くべきだと思っている先生もいれば、治しやすい歯を抜くべきと思う先生もいます。
4番以外を抜歯する先生もいれば、4番以外は抜歯すべきでないと考えている先生もいます。
今の担当の先生は、5番に神経が無い歯があるのをわかっていて、4番抜歯を提案しているわけです。
さらに、5番抜歯を進言してもやんわりと断っているわけです。先生の思想がわかりますね。

矯正歯科医師を選ぶことはできても、治療法は結局矯正歯科医師が勧めない方法は選べないわけです。
今の担当の先生は5番抜歯を選んでくれず、質問者様が5番抜歯を希望するのであれば、
5番抜歯をしてくれる矯正歯科医師を探すことになるかもしれません。
実際に、口の中を見ていないので、もしかしたら5番抜歯をしない方がいい理由があるかもしれません。
まずは、現担当医の矯正歯科医師と再度話し合ってからだと思います。
矯正歯科医師側も、提案する治療法を選ばない患者さんの治療は行いません。
歯科医師と患者の意見が一致して初めて治療が開始できます。そのための検査・診断です。

以上を質問の回答といたします。よろしくお願いいたします。