質問

矯正が終わって1年ほどリテーナーをつけています。
矯正は中学から上の歯だけをやっていました。高校ではリテーナーなどは何もつけず、大学生からまた再開し、上の歯と下の歯を矯正しました。抜糸などはやっていないです。しかし、矯正が終わってから笑うと顎が長くなってしまい、高校の時と顔が違うのです。とても悩んでいて精神状態が最悪です。リテーナーをするのをやめれば元の状態にはいつか戻るのでしょうか。

回答

笑うと顎が長くなった、というのがどのような状況か少し理解しがたいところがありますが、
顔立ちが変化してしまったことに関しては２つ予想が出来ます。

まず、そもそも顎が伸びた、ということです。矯正治療と無関係に。
女性は１５歳、男性は１８歳まで下顎が伸びると言われておりますが、
レイトグロースといって、２０歳くらいまで顎が伸びる人もいます。
私がまさしくそうで、大学入学時と３年生くらいで顔が違います。
その間に矯正治療は行っておりませんし、明らかに顔がゴツくなりました。

２０歳を超えてからは、特定の病気でなければ顎が伸びることはありません。
たまたま矯正治療期間と重なったので、矯正治療のせいで伸びたと思っているかもしれませんが、
そもそもまだ顎の成長が止まっていなかっただけかもしれません。
矯正中は器具の厚み分口元が突出しますから、顔の変化に気づかなかったのでしょう。

加齢や体重変化などで顔立ちは変わっていくものです。芸能人もそうですよね。
ご自身の顔面の全盛期を、過去の一時期の顔立ちを基準としない方が良いかと思います。
基本的には２０歳以降は全身すべてが老化していくことになるわけです。
人生の中で、今この瞬間が一番若く、美しいわけです。明日には劣化しています。
まだお若いと思いますが、人間は老化する生き物ですから、老化を受け入れる心構えは大切ですよ。

もう一つは、矯正治療が影響しているとすれば、非抜歯矯正が原因かもしれません。
おそらく、歯並びがでこぼこしていて矯正治療を行っていた場合、
歯を抜かずに治療を行うと、ある程度前歯が前に飛び出します。
まっとうな矯正歯科ならば、非抜歯矯正による口ゴボ化については説明済みだと思います。

矯正治療は、前歯が前後に動かないようなプランにしない限り、必ず口元が変わります。
前歯が引っ込めば、口元も引っ込みます。前歯が前に出ると、口元も出ます。
検査・診断による、治療計画の説明時に、どのような顔になるかの説明があったかと思いますが、
その際に、顔立ちの仕上がりについての説明・理解が不足していたかもしれませんね。

前歯が前に出ると、口が閉じにくくなります。その際に、力まないと閉じれなくなります。
口を閉じているときや、口を開いたときに、前歯が唇に引っかかるために不自然になります。
どのような経緯で非抜歯矯正になったかはわかりませんが、もしかしたら抜歯矯正が正解だったかもしれません。
今から抜歯矯正をやったとて、今の顔立ちで口が引っ込むわけで、高校時代の顔には戻りませんのでご注意ください。

元の顔に戻りたい、ということですが、リテーナーをやめても元の歯並びには戻りません。
リテーナーをやめると歯並びが崩れますが、元と同じ歯並びになるわけではありません。
矯正前とは違った感じの、崩れた歯並びになっていきます。
せっかく二回も矯正して完成した歯並びですから、崩してしまうのはもったいないと思います。
リテーナーをやめてしまうといつの日か必ず歯並びは崩れますので、やめない方が良いと思います。

現状、顔立ちにコンプレックスを抱いており、その原因が矯正治療ではないかと思っていらっしゃるということですが、
矯正治療の影響だったとしても、関係なかったとしても、元の顔に戻ることなど不可能です。
そのようなことが可能であれば、顔を商売道具としている芸能人が劣化するはずありません。
顔以外のすべてにおいて、過去の状態には戻ることはできませんので、後ろを向いているのは非生産的です。
元に戻りたい、ではなく、顔を変えたい、であれば方法はいくらでもあります。

自分の顔が気になってしょうがない、ということでしたらそれは醜形恐怖症に陥っているかもしれません。
口元だけのことであれば再矯正で変わるかもしれません。その際は、抜歯しないと効果はありません。
骨格自体の問題であれば、形成外科に一度行ってみることをお勧めします。
顔を整形することに抵抗がある、としても解決策を提案できるのは美容整形でないかと思います。
相談に行ってみれば、整形しないまでも心に引っかかっているものが無くなるかもしれません。

矯正治療は、歯を動かすだけであり、それに伴って口元が変化するだけです。
顔がすごく変わりますよ！と誇大広告している矯正歯科の責任もあると思いますが、
矯正治療による顔面の変化に過度な期待はされない方が良いと思います。
歯がちょこっと動いただけで顔面全体が大幅に変わるはずがないですから。
あくまで、咬み合わせを改善する医療であり、その副作用で見た目が変化しているに過ぎません。

顔が気になる、という患者さんに対して、矯正治療で改善できない内容の悩みである場合、
顔を変える形成外科に行くべき、というのが正しい対応になります。
そこまで気にならないのであれば、そのままでいいじゃないですか、となりますが、
とても気にしているのであれば、精神衛生もありますので、整形も視野に入れてみましょう。
身体の健康面では不要ですが、心の健康面においては立派な医療行為と言えるでしょう。
相談を受けるだけなら何も問題はないかと思います。