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矯正コラム

2022.03.14

噛み合わせの為の矯正治療

質問

3年程前から歯並びが乱れてきて、同時に顎関節症がひどくなってきました。下の歯(特に左右3番)が大きく内側に傾斜し、前歯はガタつき、全体的に内に入ってきて舌が収まらないくらい狭くなりました。上の前歯は左右2番3番に押されるように出っ歯になってしまいました。歯列が乱れたことで噛み合わせがおかしくなり、奥歯で噛めなくなりました。下顎が不安定で、寝ている間に下顎が前方左右に大きくズレて、上前歯を乗り越えてしまい、その位置で歯軋りをする為、全体の歯が不自然な噛み合わせですり減ってしまいました。かかりつけ医で、顎関節症のスプリントを作ってもらいましたが、顎の動きがおかしく、よくなる兆しがありません。下顎が不安定で、どこで噛むのが正しいのかわからなくなっているので、噛み合わせは触りようがないと言われました。このようにすり減ってしまった歯でも、正しく噛めるようになりますか?顎関節症を患いながらの矯正治療は可能ですか?

回答

歯並びが変わってきてでこぼこになってきた、
咬み合わせが変化してきて咬む位置が安定しない、
顎関節症状が悪化してきた、
歯ぎしりによって歯がすり減っている、
この状態で矯正治療が出来るのか、
ということですね。

まず、歯並びの変化についてですが、これは加齢変化によるところだと思います。
歯は歯槽骨という骨に埋まっていますが、エイジングによって歯槽骨が減っていきます。
原因は様々で、歯周病によって、歯ぎしりによって、純粋な老化として、骨が減り、歯茎が下がります。
埋まっている量が減ると歯はぐらつき始め、動くようになってしまいます。

つまり、歯並びというものは一生同じではなく、誰しも老化とともに崩れていくものです。
今後も、より崩れていく可能性が高く、崩さないためには矯正治療後にリテーナーで抑えるほかありません。
多くの方が、下の前歯がでこぼこになっていきます。歯の位置が変われば、咬み合わせも変わってしまいます。

咬む位置が安定しないのは、咬み合わせがバッチリでないからです。
本来、理想的な咬み合わせというのは、
「軽く口を開け、リラックスした状態でゆっくりと顎を閉じていき、そのまま全体的に咬みあう状態」です。
ゆっくりと閉じて初めに当たる場所と、全体的に咬みあっている場所が異なるのは、良くない状態です。
顎的に無理なく咬みたい位置と、歯にとって一番接触している位置が違うとなると、顎的に無理な位置で咬むことになります。

咬み合わせが安定しないことで、顎関節症状が悪化したり、歯ぎしりが悪化したりします。
今起きていることの中心的な原因は、咬み合わせの悪さから来ているのかもしれません。
そして、咬み合わせを良くするためには、全体的に歯の位置を治していく矯正治療が必要になるということです。
矯正治療で良い咬み合わせになれば、歯ぎしりや顎関節症が必ず治る、というわけではありませんが、
矯正治療が現状を改善するうえで、プラスに働いてくれるのではないかと思います。

歯がすり減っていても、矯正治療は可能です。
あまりにも短くなってしまった歯では矯正器具がつけられないので、
場合によっては、一度正常な形の歯に治してから矯正治療をすることになるかもしれません。
歯に銀歯やセラミックを被せるという意味ですが、削れているということは、削れた歯の形で咬みあっているということです。

歯の形を大きくしてしまうと、そこばかり当たって咬み合わせが安定しなくなりますが、
それは矯正治療で改善するので問題ありません。
矯正治療後の良い咬み合わせに合わせて歯を被せる方が、より良い被せものが入ります。
一度、仮の被せものにして歯の形を再現し、矯正後に完全な被せものをするのが理想的かもしれません。

顎関節症状が起きていても、矯正治療は可能です。ただ、顎関節治療用のスプリントは同時に使用はできません。
矯正治療が終わり、そのうえでまだ顎関節症状が出ているのであれば、スプリント治療などを再開しても良いでしょう。

今の状態で矯正治療ができるかどうか、については実際に口腔内を見てみないと何とも言えませんが、
よほどの状態でない限り、矯正治療は可能です。50代の方でも矯正治療を行っている人は多くいます。
ただ、歯槽骨の状態によっては、矯正治療が出来ない、出来るけれどデメリットの方が大きいのでやらない方がいい、
となる可能性があります。大事なのは、実年齢ではなく、歯槽骨の健康度合いです。

矯正治療は、歯槽骨に埋まっている歯を動かしていくものになりますが、
歯槽骨を溶かしてスペースを作って歯を動かし、スペースが余った部位に骨を作って埋めていきます。
ご自身の骨の新陳代謝を利用し、骨を壊したり作ったりしながら歯を動かしていくので、
歯槽骨が残っているか、骨の代謝が活発か、が重要になります。

加齢変化や歯周病などで、歯槽骨が著しく減っている場合、矯正治療をすることでもっと歯槽骨が減ります。
歯が埋まっている歯槽骨が減ると、歯がぐらつきやすくなり、歯の寿命を縮めてしまうことになります。
医療というのは、必ず副作用があり、ノーリスクな医療行為はありません。
歯を残すために行った矯正治療によって、歯の寿命を縮めてしまったら本末転倒なので、
歯槽骨があまりにも減っているであれば、たとえ20代でも矯正治療をお勧めできません。
どんどん歯が動いて歯並びが崩れていっているとしたら、歯槽骨が減っている可能性は高いです。

また、骨代謝が著しく落ちている際も矯正は適応外となります。
骨粗しょう症を抑える薬などを服用している場合は歯が動かなくなっているので、難しいでしょう。
矯正治療が可能かどうか、やるメリットがデメリットを上回るかどうかは、矯正歯科医師にご相談されると良いでしょう。

基本的に、おいくつになっても矯正治療可能です。私は過去に80才の方を矯正治療したことがありますが、
歯槽骨の状態がとても良好だったので、何の問題もなく治療が出来ました。
まだ、矯正歯科に相談に行ったりはしていない状態だと思いますので、
気になっている、出来れば治したい、と感じているのであれば、お早めに相談に行くと良いでしょう。
様子見していても状況は好転せず、だんだん矯正治療をしにくくなっていくでしょう。相談はお早めに。

以上で、ご質問への回答とさせていただきます。よろしくお願いします。
何か気になることがあれば、ご追加でご質問ください。