質問
右下の5.6欠損です。自費の入れ歯を作ってもらおうとして、入れ歯専門医のいる歯科に行ったら矯正歯科に行ってくださいと言われました。矯正歯科に行ったら、上顎にアンカースクリュー必須と言われています。今不妊外来も通ってて妊娠希望です、矯正治療はネットで体験談見てると本当に大変そうです、妊娠しても矯正は続けられるのでしょうか、あちこち体が痛くて、つわりもあっての時に、矯正の痛みまであることを想像すると過酷です。せめてトラブルの起きにくいヘッドギアとかにはできないのでしょうか。(面長、顎小さめ、顎後退してて、ガミー、少し前歯出てます、オープンバイトです)
回答
入れ歯や被せものを入れる前の補綴前矯正が必要と言われたということですね。
これは、ご質問者様がオープンバイト(開咬)であることが一因していると思います。
前歯が咬みあわず、奥歯しか咬みあっていない状態を開咬と言いますが、
奥歯ばかりに負担がかかり、奥歯が壊れやすくなります。
もしかしたら歯を失うことになった原因は、開咬であったことも影響しているかもしれません。
開咬は8020運動(80歳までに20本以上歯を残そう運動)も達成できないという研究もあり、
補綴前矯正としてではなくとも、将来的に歯を残していくうえで矯正治療が重要になるでしょう。
奥歯しか咬んでいないのに、その奥歯に入れ歯やブリッジ・インプラントなどを入れると、
そこばかりに負担がかかり続け、人工物が長持ちしにくくなります。
何かしらの方法で歯を入れる前に、咬み合わせを良くした方が、補綴物が長期安定するため、
先に矯正治療をした方が良いと言われたのだと思います。
先に補綴物を入れてしまうと矯正治療が出来なくなってしまうため、矯正治療が優先となります。
ネット上の体験談については、ネガティブなものが大半です。
体験をアップする人の心理として、興味を引きたい、愚痴りたい、妬まれたくないというのがあるからです。
矯正やってよかった!辛くない!なんて感想を載せても誰も興味を持ちませんし、
高額費用の掛かる矯正治療をすることで奇麗になった、というのは
矯正をやりたくてもできない人たちにとっては自慢にしか見えないため、高評価を上げる人は少ないです。
やっている人が若い女性が多いことや、苦痛に耐えている自分を慰め、褒めてほしいという射幸感もあり、
基本的に、矯正治療をやった人の意見を見るとネガティブなものばかり目につくわけです。
他人の興味をひいたり、いいねが欲しいのが目的でもあるので、話も大げさに盛りがちだと思います。
また、調べている方自身が心配性である場合、ネガティブな情報なかりを集めてしまう傾向もあるでしょう。
ネット情報が間違っているとは言いませんが、偏りはあるものと思った方が良いでしょう。
しかして、矯正治療は大変です。時間もかかる、お金もかかる、痛みや違和感もあり、本人の努力も必要となります。
デメリットを上げたらきりがないほどですが、それを上回るメリットを感じた方のみがやるべきものです。
見た目が良くなり、食事もとりやすくなり、歯も残しやすくなります。
患者様に関しては、現状すでに咬み合わせでお困りであり、矯正治療をしなければ今後改善されず、
しないままでいると口腔内環境は悪化の一途をたどるでしょう。
将来のために慎重に検討されると良いと思います。
基本的に、歯科矯正用アンカスクリューはそんなに大きな負担はありません。
とても小さなネジなので、局所麻酔をした後はそんなに痛みも出ませんので、
自分の体に金属を直接刺すと考えると大変そうに思うかもしれませんが、大事ではありません。
出っ歯を治す、ガミースマイルを治す、開咬を治す、そのすべてにアンカースクリューが必要不可欠です。
面長・出っ歯・開咬をアンカースクリュー無しで治療を行うのは、非常に困難なパターンです。
アンカースクリュー無しだと、膨大な治療期間がかかるか、
うまく治らないか、外科的矯正治療で治すしかないと思います。
つまり、アンカスクリューを使いたくないのであれば、もっと大変な思いをして治療をすることになるので、
むしろ矯正治療をやらないほうがいいのではないかと思います。
それぐらい質問者様にはアンカスクリューが必須となります。
旧来の方法として、ヘッドギアを使用する方法もありますが、
就寝時は必ず、場合によっては日中も使用し続けなければいけませんし、
サボってしまうと治療が絶対に失敗します。妊娠中も産後も必ずやり続けるのです。
ヘッドギアも痛みもあれば変形もあり、トラブルは起きてくるものです。
一回麻酔してアンカスクリューを入れるのとどちらが大変でしょうか。
アンカスクリューの登場で矯正治療は選択肢が広がり、患者さんの負担が激減したのです。
アンカスクリューを使った方が、断然楽だと思ってください。
不妊治療中ということですが、妊娠されている時期に矯正治療上配慮すべきことがあります。
抜歯などの観血処置(血が出る処置)や痛み止め・抗生剤などの投薬です。
抜歯時やアンカスクリュー埋入時には局所麻酔を行いますし、処置後に服薬があります。
胎児への影響を考慮した時には、妊娠中はおこなわないようにするか、妊娠安定期に行います。
比較的胎児への影響が少ない薬も選択できますので、
矯正治療中に妊娠が発覚した場合は、担当医に相談しましょう。
産後であっても、本人が飲んだ薬の成分が母乳に移行し、乳児への影響が出ます。
完全ミルクやミルクと母乳の混合であれば影響はありませんが、
完全母乳育児である場合に、薬を使う前に母乳を保存しておくなどして対応する必要があるでしょう。
矯正治療中に妊娠・出産を経験される方はたくさんいらっしゃいますので、適切に対応すれば問題はありません。
開咬で、負担を少なくしつつ、アンカーを使いたくない、となればマウスピース矯正という選択肢もあります。
口腔内の状況や治療プランにもよりますが、インビザラインなどのマウスピース矯正は開咬の治療に適しています。
アンカスクリューが必要なのは、奥歯を圧下(骨の中に沈めていく)させることで
奥歯を当たらなくさせて前歯を咬ませることに必要だからです。
奥歯を圧下させる歯の動かし方を、マウスピース矯正は得意としているので、開咬が治りやすいです。
マウスピース矯正である場合はアンカスクリューも使用しない場合がほとんどですし、痛みもほとんどないです。
ただ、マウスピース矯正は一日20時間以上の使用が必須となりますので、本人の努力依存の治療になります。
アンカスクリューを使用してワイヤー矯正を行うか、場合によってはマウスピース矯正で治せるか、
やはり矯正治療を行うことは難しいと判断されるなら矯正をならないとするか。
不安であれば、不妊治療を経て妊娠・出産が終わってから矯正治療を行うのももちろん可能ですが、
歯が欠損している状態を長く放置していると、歯槽骨が減ってしまい、周囲の歯が動きにくくなったり、
矯正後に欠損部にデンタルインプラントが出来なくなってしまう可能性があります。
どのような方法で治すか、やるかやらないか、いつやるか、という点に関して、
矯正を担当してくれる先生とよく相談し、検討されると良いと思います。
質問の回答は以上とさせていただきます。よろしくお願いいたします。